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浪漫主義 明治二十年代は写実主義の展開と時を同じく して、世俗的習慣や封建的倫理にとらわれな いで、個人の絶対化と内面的真実を尊重する、 青年らしい革新的な気風に満ちたロマンティ シズム（浪漫主義）がおこった。浪漫主義の先 駆者としては、初期の森鴎外を挙げることが できるが、実際に活躍したのは北村透谷ら、 「文学界」の若い人々であった。 ◆封建制を排して、人間性の解放を求め、恋 愛や芸術の絶対性を主張した
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初期の森鴎外 ◆文芸評論雑誌「しがらみ草紙」を発刊し、外 国文学の翻訳紹介などによって多彩な啓蒙 活動をみせた。坪内逍遥との間に交わした ｢没理想論争｣は有名である。 ◆ドイツ留学を記念する小説『舞姫』『うたか たの記』『文づかひ』の三部作を雅文体でつ づった。 ◆特に『舞姫』は近代的自我に目覚めた青年 の苦悩を写して、『浮雲』とともに日本近代文 学の先駆的作品と評価されている
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没理想論争 明治二十四(1891)年から翌年にかけて、坪 内逍遥(「早稲田文学」による)と森欧外(「しが らみ草子」による)との間で行われた文学論争。 逍遥はシェークスピアを引き、文学は人生観 などの理想を露呈しない｢没理想｣の客観主 義に立つべきであるとしたのに対して、鴎外 は理想的極致を否定する態度だと非難した。 しょうような写実主義と欧外の浪漫主義的立 場を明らかにした
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「文学界」と北村透谷 ◆浪漫主義の牙城となった雑誌に、明治二十六年 に創刊された「文学界」がある。キリスト教による女 子教育を目的とした「女学雑誌」を母胎として、北村 透谷、平田禿木、戸川秋骨、馬場孤蝶などの参加に より生まれた雑誌である。 ◆透谷は最初自由民権運動に参加していたが、苦 悩の末、文学に戦いの場を求めた。『人生に相渉る とは何の謂ぞ』『内部生命論』『厭世詩家と女性』な どの評論を発表し、恋愛賛美、生命感の充実を叫び 功利的なものを激しく否定し、日本の浪漫主義文学 運動の先駆者として活躍した
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高山樗牛の思想遍歴 浪漫的歴史小説『滝口入道』で文壇に第一声をあげ た高山樗牛は、やがて評論に転じた。日清戦争後 に創刊された当時の一流総合雑誌「太陽」の文芸部 主任に迎えられ、国権の拡張に自我拡大の欲求を 託する浪漫的な国家科至上主義――日本主義を提 唱した。青年層を陶酔にさそいこむ華麗な美文を駆 使した高山樗牛の評論活動は、その後、ニーチェの 影響のもとに、個人主義的な本能生活の充足を強 調する美的生活論へと転じ、さらに晩年の日蓮研究 へと三転するが、そのめまぐるしい思想的屈折は、 日清・日露両戦争間の文学における過渡的な性格 を最も端的に示している
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観念小説・深刻小説 観念小説：泉鏡花の『夜行巡査』『外科 室』、川上眉山の『書記官』『うらおもて』 深刻小説：広津柳浪は社会の悲惨な 現象に目を向け、『黒蜥蜴』『変目伝』 を 書いた。 ◆悲惨のための悲惨を求めて題材の異 常を競う結果となり、両者ともに行き詰 まった
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後期浪漫主義 泉鏡花の神秘・夢幻 徳富蘆花も後期浪漫主義の作家である。彼はキ リスト教を信じ、自由主義者であった。代表作『不 如帰』は封建的な家庭生活の因襲の不合理を訴 えた。 国木田独歩：詩情豊かな『武蔵野』を書き、次い で『源叔父』『忘れえぬ人々』『牛肉と馬鈴薯』『運 命論者』などを発表し、叙情詩人らしい素質を示 した
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「高野聖」(1900) 飛騨山中で道に迷った旅僧が、白痴 の男と暮らしながら、魔力をもって触 れる男を醜い｢けだもの｣に変えてしま う美女に出会い、それとも知らずに誘 惑されかけたが、その気持ちを妄念と さとされて危うく逃れたことを老僧の 話の形で語っている
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徳富蘆花(とくとみろか、1868－1927) キリスト教を信じ、自由主義者であった蘆 花は、民友社の記者の傍ら、創造活動を 続け、家庭小説｢不如帰（ほととぎす、 1898－1899）｣を発表した。封建的な家族 制度の不合理を指摘した作品である。「自 然と人生（1900）」はロマン的で清新な自 然描写で名声を得、自伝小説｢思い出の 記（回忆记，1900）｣も青年たちに好評を 博した
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国木田独歩(くにきだどっぽ、1871－1908) 同じ民友社の記者出身である国木田独歩は自 然観照により、詩情豊かな｢武蔵野（むさし の、）｣を書き、ついで｢源叔父｣｢忘れえぬ人々｣ ｢牛肉と馬鈴薯｣「運命論者」など叙情詩人らし い素質を示した。晩年は次第に自然主義的傾 向を帯び、自然主義文学への過渡的位置をし めた。ワーズワース、ツルゲーネフ、モーパッサ ンらの影響を受けている